恵那市 洞禅院 住職 紀藤祐元師
「あの人に会いたい。あの人は今いったいどこにいるのだろう。」 皆さんは、ご家族や友人など、親しい間柄にあった方々を亡くされた後、このように思ったことはないでしょうか。 大切な方との突然の別れは、どなたにとってもすぐには受け入れ難く、またその悲しみも、生前のお付き合いが濃密であればあっただけ、深いものとなります。 会いたいのに、会えない。かつてのように顔を合わすことも、触れ合うことも叶わない。 このことを頭で理解するということと、心の底から納得するということとは、なかなかすぐには一致しないもののように思います。少しずつ少しずつ、時に周囲の助けを得ながら、自分の中にその厳しい現実を落とし込んでいく。そしてやがて、亡き人を亡き人として受け入れ、また元の日常へと戻っていく。誰もが、いつかは乗り越えなければならない大切なことです。 この「亡き人を亡き人として受け入れる」ことのために、是非心に留めておいていただきたいことが、冒頭の言葉「どこにいるかより、ここにいるか」です。 この世を去った大切な人を強く思うが余り、その人をどこかに探し求めてしまうことは、決して不思議なことではありません。むしろ自然な気持ちというべきものでしょう。ですがその時既に、自分の中、まさにそこに大切な人がいる。このことに是非気づき、亡き人を追い求めることによって却って膨らんでしまう寂しさから、少しでも解き放たれていただきたいのです。 ご自宅のお仏壇やお墓、菩提寺など、私たちは幸いにも、いくつもの場所で亡き人と出会うことができます。そしてそのどこもが、大切な出会いの場なのです。 どこかひとつの場所だけに亡き人がいるわけではない。大事なのは、あなたの中にその人がいる、ということ。「どこにいるかより、ここにいるか」を確かめることです。