新たな節目を迎えても

  

 

高山市 正宗寺住職  原田太石師

 

「一年の計は元旦にあり」ということわざがありますが、進学される方、新社会人となる方など、正月と同様、年度替わりの4月を新たな気持ちで迎えられていることと存じます。特に今年は5月から新たな元号へと移行する記念すべき年となります。多くの方が、新たな節目を迎えるような心持ちでお過ごしのことでしょう。振り返ってみて平成という時代は、皆さまにとってどのような30年だったでしょうか。

私は、昨年暮の明仁天皇陛下の誕生日の会見でのお言葉が印象に残ります。「先の大戦で多くの人命が失われ、また、我が国の戦後の平和と繁栄が、このような多くの犠牲と国民のたゆみない努力によって築かれたものであることを忘れず、戦後生まれの人々にもこのことを正しく伝えていくことが大切であると思ってきました。平成が戦争のない時代として終わろうとしていることに、心から安堵しています。」

戦争を知らない我々多くの日本人と、戦争しか知らない紛争地の人々。生きていくエネルギーとしての欲は必要ですが、それに振り回されると決して平和な世の中を築くことはできません。例えば、雪道ですれ違うのが困難なときに、「どうぞお先に」と、相手に道を譲る方の多い飛騨地方では、交通事故が起こりにくいのだと警察の方から聞いたことがあります。

新たな節目を迎えても、平和な世の中を作ろうという私たち一人一人の心がけこそが、幸せな新時代を築いてゆくのだと感じます。まずは、皆さまと共に、それぞれの地域から住みやすい社会を作っていきましょう。