雪裏の梅花

高山市丹生川町 慈雲寺 住職 小林 孝明 老師

一年で一番寒い大寒を迎えようとしています。

一面銀世界となったこの季節、子供の頃は雪や寒さをむしろ歓迎するかの如く、冬の遊びに明け暮れたものでした。しかし、歳を重ねますとそんな思い出も遠い昔、ストーブやコタツのお守をする毎日です。

私の地方では、この季節の雪はサラサラで固まらず、雪合戦をするのも苦労しました。しかし、三月に入り気温が上がりますと、昼間に溶けた雪が夜の寒さで硬く締まってきます。

『かたゆきかんこ しみゆきしんこ』今でもこの言葉を口ずさみながら、雪の上を歩くのが楽しみのひとつです。足が落ち込まないので、どんな場所にでも歩いて行けるからです。どこか違った世界に迷い込んだような錯覚を覚え、心も体も浄化されていくのを感じます。

道元さまの愛した言葉に『雪裏の梅花』があります。お釈迦さまが、菩提樹の下で悟りをひらかれたその一瞬を、道元さまは雪のなかに咲く梅の一枝と表現されました。

厳しい雪の中に咲く梅の花にこそ、三世諸仏に一貫する仏法の真実があるとし、師から弟子へと受け継がれている正しい仏法の姿、魂の継承を讃嘆しておられます。

山や川、草や木々という無生物にも仏性が宿り、大自然の一瞬一瞬が姿を変えながら私たちに生きる喜びを与えてくれるのが『雪裏の梅花』と言えるでしょう。