「当たり前と思わぬ心」

多治見市 安養寺副住職 小島泰寛 師

間もなく令和2年度が終わりを迎え、新しく令和3年度がやってまいります。

年度替わりのこの時期は出会いと別れの季節であり、新生活の始まりの季節でもあります。

毎年、年度が替わるころ、その年度を振り返り、次の年度に向けて気持ちを新たにされる方もいらっしゃるでしょう。

私も昨年度末、来る令和2年度に向けての抱負を持って新たな年度を迎えようとしていました。その抱負の中に「やろうやろうと思いながら昨年度中にできなかったから来年度にはやろう」と思っていたことがいくつかありました。

しかし、結局それは叶いませんでした。

ご存知の通り、この令和2年度は新型コロナウイルス感染症による未曾有の状況によって私たちの生活が大きな影響を受けました。

「当たり前」だ思っていたことが「当たり前」でなくなった。そんな一年ではなかったでしょうか。

お釈迦様は「諸行無常」だとお示しになりました。「世の中のすべてのものは常に変化し続ける」すなわち「この世に当たり前に存在し続けるものはない」という教えです。

私も頭では理解していたつもりの「諸行無常」。しかしながら心のどこかでは「また同じ機会がやってくる」そう思っていた部分がありました。

だからこそ、「すべきこと」「しなければいけないこと」をまた「いつか」と先送りにしてしまい、心のどこかで「当たり前」だと思っていた日常が「当たり前」でなくなった時、私の思い描いていた「いつか」はついにやって来なかったのです。

いつか、また今度、と思っている間に私たちの限りある人生は終わってしまいます。「いま」すべきことを「いま」しっかり行っていく。この繰り返しが私たちの人生を豊かなものにしてくれます。

「いま」すべきことは何か。常に自分に問い続け、それを実行していく強い心を持ち、日々実践していきましょう。