「日日是好日」

高山市 慈雲寺 住職 小林孝明 師

十年前の三月十一日、東日本太平洋沖で起きた地震は、東北地方の広範囲に甚大な被害をもたらしました。福島第一原子力発電事故の被害も、万人周知の事実です。

また、数年前から毎年起こる豪雨災害は、被災からようやく復興しはじめた人たちに対して、傷口に塩を塗るような試練を与えています。

古くは文政十一年、現在の新潟県に起きた三条地震という大地震がありました。この地方に被害があった人に、江戸時代の名僧良寛さまが送った手紙があります。要約しますと、

「地震はまことにたいへんでした。突然のことで、こんな憂いを見ることはやりきれないことです。

しかし、災難に遭う時には災難に遭うがよく、死ぬ時には死ぬしかありません。これは災難を逃れる妙法であります」と。

災難に遭ったら災難を受け入れよ、死ぬときがきたら死を受け入れよ、私達にはかなり難しいアドバイスですが、仏教は常に、死と苦悩を見つめていかに今を生きるかを説きます。

災難も死も、日常生活から離れて存在するものではありません。日常の中には、良いことも、試練も含まれており、そこを逃げずに生ききって毎日を送ることを「日日是好日」と言います。

仏教は、日々の過ごし方を問い続ける道であると言えるでしょう。