岐阜市 龍雲寺 住職 梅村季弘 師
朝出掛ける時、「行ってらっしゃい」と声を掛けていますか。出掛けに忙しくて、声を掛けられなかった事。日常のことなので、つい、してしまいがちなことのひとつです。しかし、出掛けるときの「行ってらっしゃい」の一言や笑顔はとても重要だとは、思いませんか?
以前に働き盛りの男性が仕事に出掛け、帰宅途中に不慮の事故により、亡くなられた事がありました。その方のお悔やみの席での奥様から出た言葉が、昨夜喧嘩をしてしまい朝「行ってらっしゃい」も言わなかった。と、とても悔みながら涙を流されていました「なぜ、今日なのか。なぜ、昨日、喧嘩をしてしまったのか」奥様の悲痛な叫びでした。
人との別れというのは、今に生きている私たちには、必ず訪れるものです。この今の時の次には、相手との別れが、待っているのかもしれないのです。それは、死ぬ事かもしれないし、ずっと会わなくなる事かもしれません。そう思うと、今一緒にいる人との時を常に大切にすごしたい、と切に思えてくるのです。この今という時は、次の今とは、また異なる今です。出掛ける時、相手の人への気遣いの「行ってらっしゃい」の一言。この言葉を掛けることによっての 「今」そして、次の「今」の相手との関係性・ご縁を大切にし、また自分自身をも、大切にすることに繋がるのではないのでしょうか。そして、相手に「行ってらっしゃい」の一言で、相手のまわりにも良い空間が生まれ、自分自身にも気持ちの良い空間が、生れるのです。