因と縁

土岐市 仏徳寺 副住職 佐々繁樹 師

五月に入り田植えの時期が近づいてきました。私の住んでいる地域は田舎ですので、今の時期は町のみんなは田んぼに畑に大忙しです。そして何かを作るという事はとても大変な事です。たとえば、同じ品種のモミダネを使っていても、土壌の良し悪し、田んぼの手入れの良し悪しといった環境の違いによって、出来るお米の味は変わってきます。これはモミダネが因であり、環境が縁となります。因が同じでも縁が変われば結果も変わるのです。

私たちの生活も同じように因と縁で形作られています。良い縁があればいい方向へ、悪い縁があれば悪い方向へ進んでいきます。お釈迦さまは、一切法は因縁生なりといわれ、すべての物事は、因だけでは結果は生じない。因と縁とが結びついて初めて結果になるのだと教えていかれました。

因は同じでも、縁が違えば、結果は異なります。ですから、お釈迦さまは、より良い縁を選びなさいと教えて行かれました。
なぜなら、私たちの心は弱く、ちょっとした縁でコロコロと変わるからです。朱に交われば赤くなると言われるように、周りにいる人や環境などの縁に大きく影響を受けてしまうからです。どんな人に交わるか、どんな環境に身を置くかで、これからの人生も変わってきますから、周りにいる人や環境という縁はとても大事です。精一杯、努力をしていても思うような結果が出ないときはそれはまだ、縁が来ていないだけです。縁が来れば、春に一斉に花が開くようにこれまでのたねまきがパッと花咲かせます。焦る必要はないのです。タネをまかなければ結果は現れませんが、同時に縁がそろわなければ、タネが芽を出して花開くことはありませんから、縁はとても大切です。皆さんもより良い縁を探しましょう。