「除夜の鐘と三毒」

中津川市 萬獄寺 住職 皮地昇雲  師

今年も早いもので師走となり、間もなく大晦日を迎えます。

12月に入ると、お正月を迎える準備で忙しくなります。例えば、大掃除をしたり、餅つきをしたり、門松の準備をするご家庭もあるでしょう。そのほか、地域に伝統的に伝わる多くの民間の行事にならって、新年を迎える準備を行うことと思います。

さて、12月31日は大晦日と呼びます。昔は、毎月の終わりの日を晦日と呼んでいました。そして、この12月の終わりは1年の終わりなので、特別に大晦日と呼ぶようになったのです。

この大晦日は1年の最後の日で、古い年を除き去り、新年を迎える日という意味から「除日(じょじつ)」といい、その夜は「除夜」といいます。この除夜に煩悩を祓うために打つ鐘を「除夜の鐘」ということは誰でもご存じで、その打つ回数108回が煩悩の数に由来していることも、多くの方が知っていることでしょう。

人間には煩悩という切り離せない穢(けが)れたものがあります。

その108の煩悩をさらに突き詰めていくと、貪瞋痴の三毒に集約されます。すなわち、『貪(とん)』は、貪欲(とんよく)、むさぼりの心、『瞋(じん)』は瞋恚(しんい)、いかりの心、『痴(ち)』は愚痴、おろかな心。この三毒こそが人の心を惑わせたり、悩ませ苦しめたりする心の働きで、生きていれば誰にでも表れてくる悪い心です。ここで大切なのは、それらを消すことではなく、それらが「自分の中に在ること」を知ることなのです。それによって自分が劣っていることでも、他人を見本として克服したり、他人の失敗も自分と重ね合わせることで寛容に受け止めることが出来る、ということにも繋がると思います。

除夜の鐘を聴きながら、過去の自分を反省し、清浄潔白な心になって新年を迎えたいものです。