加茂郡白川町 洞雲寺 住職 尾関幸憲 師
水は上から下へ流れます。
実は「水は下から上へ流れる」の道理を知らないと、「水は上から下へ流れる」道理を理解した事にはなりません。
川の水は必ず上から下へ流れます。上流から下流へと流れます。当たり前の事であります。おかしいもので、川の水は上から下へ流れているにも関わらず、無くなることがありません。
なぜでしょうか。
茶碗の中のお茶を飲んでしまえば空になってしまうので、どんだけ逆さにしてもお茶は出てきません。また飲む為にはお茶をつぎ足さなくてはいけません。
このつぎ足す事こそ「水が下から上へ流れる」道理なのであります。
何故ならば、太陽が照って大地を照らし、蒸気となって水は天にのぼり、上にのぼって霧となり雲となり、雨となります。水が上から下へ流れるのみであるならば、川の水は枯れてしまうのです。
自分のすぐ近くで水が上へあがる事が起きているにも関わらず、見えないからそれに気づく事はありません。
ただ「水は上から下へ流れる」のみと見えてしまうのです。
仏教的な言葉で言うならば、これを「無明」と言います。一般的に言うならば「迷い」の事です。
一方の事しか見えていない。偏った見方しかできていないから、真実を見落としているのであります。
私達人間はとてもおろかで、ほとんどの人が自分の事ばかり考えています。自分中心になる事が多いのです。
この世の中の、全ての物に支えられている事をある程度は知っていても、それを感謝の行動として現すことはできません。
自分中心であるが故に、なかなか気づく事ができないのであります。
世の中には私達が見えない事や、気づかない事はとても多いのです。自分勝手な思いや行動に執着せず、むさぼる事を戒め感謝の行動をおこす事こそ、「水が下から上へ流れる道理」なのであります。自分の好きな事ばかりやっていると、あなたの未来は枯れちゃいますよ。