「挨拶は心温まるもの」

郡上市 北辰寺 住職 岡本幹彦 師

ある日の事です。郡上市の国道156号線を自家用車で走っていました。信号のないのどかな田舎道です。ところが、急に前の車が止まりました。車間距離も離れていましたので、難なく止まることが出来ました。よく見ると、もう少し先に横断歩道がありました。横断歩道には、自転車を引いた子どもたちが立っていました。前の車は横断歩道で、子ども達が立っていたから止まったのでした。私は早速ハザードを付けて、後ろの車に知らせました。前方から走ってくる車も横断歩道の前で止まったので、子ども達は自転車を引いて渡っていきました。渡り終えると、子ども達はふり返り大きな声で「ありがとうございました」と言って頭を下げました。私はニコッと笑いかけて、手を上げました。何だか心が温かくなってその後の運転も楽しいものになりました。

人と人の出会いは「挨拶」で始まります。どんな挨拶をするかで、その後が決まります。私の心が温かくなり楽しくなったのは自転車の子ども達の「挨拶」です。「挨拶」は人と人とのつながりを支えます。

さて、「挨拶」という言葉です。この言葉は仏教、それも禅の言葉から出ています。中国の仏教書「碧巌録」には「一挨一拶」お互いに相手の悟りの深い浅いを試すこととあります。それが「挨拶」となりました。挨拶の挨は軽く押し開くこと、挨拶の拶は強くふれ迫ることです。仏教では出会いの中での「挨拶」は重要なこととなります。自分の心を開いて「挨拶」をすることで相手の心も開きます。

おはようございます。おやすみなさい。こんにちは。ありがとうございました。さようなら。ごめんなさい。いただきます。「挨拶」はコミュニケーションのツールです。

私達は、人と人とのつながりの最初のアクションである「挨拶」を忘れないようにする事で、温かい世の中となる事と思います。