「看脚下」

中津川市 蔵田寺 住職 鬼頭大輝 師

足元をしっかり看なさい。お寺の玄関に「看脚下」と掲示されている事があります。それは履物をそろえて脱ぎなさいと言う事です。

人は他人のことを、批判したり、注意したりしますが、自分自身のことはあまり注意せず、気が付かないことが多いものです。人の事より、まず、我が身の足元をしっかりと見つめたいものです。

自分の足元をよく見なさいと言う事は実に平凡な言葉ですが、日常生活の第一歩であり、禅の仏法もここが重大であります。

闇夜に灯火を失ったような人生の悲劇に遭遇した時、人の多くは右往左往してこれを見失い、生きる道を遠くに求めようとするものですが、道は近きにあり、自分自身に向かって求めよ、と言うのが看脚下の一語であります。

現代のようなめまぐるしい世の中では、目だけが先に走ってしまったり、高い所を望むあまり、足元がついついおろそかになりがちです。理想や夢も確かに大事ですが、これにとらわれると足が宙に浮いてしまいます。

足をしっかり大地に着けて、爪先を正しく向けて着実に進めるならば、目をつむっていても目的地に到達出来ます。いたずらに結果にとらわれず一歩一歩、脇目を振ることなく、たった今を真剣になることです。

皆様も一度自分自身の足元をご覧になって下さい。爪先は何処を向いていますか?