本巣市 智勝院 住職 平古琢磨 師
新型コロナウイルスにより 嬉しいはずの新しい年度の始まりが、今年度は今までにない 不安と恐怖に怯え、すべてにおいて時代が変わるかのような 衝撃を受けました。何が一番大切で何が必要なのか、私たち一人ひとりが 考えさせられる状況のように思います。
私たちは物質的な豊かさの中に「幸福」があり、物が豊かになればなるほど幸せな人生を送れると思ってきました。しかし欲しいものが手に入っても、しあわせ感は長続きしません。次の物欲が生まれ 欲にきり無しといわれるがごとく この幸せ探しは延々と繰り返されます。
日本は 世界でも指折りの経済大国で 物質も豊かですが、国民の大半は幸福度が低く 常に不安、不満を抱いているといわれています。
物質的には世界的に最も貧しい国である仏教国のブータンは、『世界一幸福度が高い国』として注目を集めています。物をたくさん持つことが即ち幸せではない。普通に食事ができることの幸せ、普通に働けることの幸せ、普通に寝ることのできる幸せ、平凡な毎日こそが幸せで、仏教への信仰心が厚く、「足ることを知る」という仏教の教えが人々の生活に根付いているからだといわれています。我々先進国で暮らす人間が忘れてしまった素朴な幸福感のようなものをブータンの人々は大事に持ち続けているのだと思います。
そう思ったときに、テレビドラマシリーズ「北の国から」のひと場面を思い出しました。
純 「電気がない? 電気がなかったら暮らせませんよっ!」
五郎 「そんなことないですよ」
純 「夜になったらどうするの!」
五郎 「夜になったら眠るんです」
「足るを知る」心を持つことで 日々感謝の気持ちを忘れない生活を送ることが いつの時代でも一番大切なことだと思います。