高山市 慈雲寺 住職 小林孝明師
京都の仏具を扱う方から、僧侶が身に着けるお袈裟や法衣は、いかに多くの人の手間に支えられているかを教えていただきました。
着物が手元に届くまでには、少なくとも十二の行程を経ているのだと言います。
図柄やデザインをお願いすることからはじまり、下絵をもとに型を彫る職人さん。生地の選定や色合わせの後、染めの職人さんを経て染料を定着させます。水で洗い流したあと仕上げ加工を施し、ようやく反物が完成します。次に縫子さんが縫製をします。お袈裟ならヒモをつくる職人さんも関係しますし、桐の箱を作る人や箱に文字を書く人、さらに風呂敷を作る人などの手も必要です。
お釈迦さまの時代のお袈裟は糞掃衣とも言われ、使い道のない捨てられた布を縫い合わせて身にまとっていました。文字通り、糞(汚物)をぬぐった後の布を洗って縫い合わせたものでした。
僧侶が身に着ける法衣やお袈裟は、たくさんの職人さんの手を経て、いまここに存在します。心して身に着けさせていただかねばと思います。
着物だけではなく、お米や食べものなどもおなじです。
曹洞宗では食事の前に「五観の偈」を唱えます。そのはじめに「功の多少を計り、彼の来処を量る」があります。この食事がどれだけ多くの人の手間に支えられ、どのような場所から食材が届けられたかをよく考え、感謝していただきましょうという意味です。
覚えておきたいお言葉です。