下呂市 金山町 長福寺 副住職 萼 弘道
ある人はクーポンを集めたり、ポイントを貯めて割引を受けたりすることが好きで、せっせと貯めては商品をもらうのを楽しみにしていました。
いつも買い物をするスーパーでカードにスタンプをもらい、月に一度の抽選会で商品券を当てようと張り切っていました。何度も行列に並び、今月こそは当てようと5回も6回も回すのですが、いつも出るのはハズレばかり。
「今まで当たったことがない。本当にくじ運が悪い。」と嘆くのでした。
そんなある時、買い物に行くと月1回の抽選日でした。「あ、今日だった。」と思ったけれど、ゆっくりする時間が無く、行列を見ただけでうんざりしていました。どうしようか悩んでいると顔見知りの人が並んでいたので、「コレあげる。使って。」とカードを渡したそうです。帰り道、1個でも当たってくれたらいいなぁと思いながら帰りました。
それから数日後、その人が訪ねて来ました。
「この前はありがとう。あの時大当たりして2000円の商品券も当たって、びっくりしちゃった。これ、半分お裾分け」
と言って、1000円の商品券をくれたそうです。
カードをあげた本人はびっくりするやら羨ましい気持ちになったけれど、何か不思議な気持ちがしたそうです。いつも自分の為に当たって欲しいと思っていたのに、人が喜んでくれたらと純粋に思ってあげたカードが大当たりしたということが、不思議に思えたのだそうです。そして、自分の為でなく人の為にと思う気持ちの大切さに気付かされたとのことでした。
何かに執着している時は周りが見えなくなりがちです。その執着心を手放した時、自分から周りへと目を向けることができるのでないでしょうか。
ほんの小さな偶然の出来事ですが、私達の周りにも、ハッと思うことがあるかもしれません。