可児市 弘福寺 住職 丹治 真一 老師
先日、福井県越前市にある御誕生寺にお参りに行って参りました。現在は修行道場になり十八名が修行をしているとのことです。
そこでは住職の板橋興宗老師が請書の前にあるパラソル付きのテーブルの周りの椅子に腰をかけておられておりました。挨拶を済ませ、向かいの椅子に腰をかけました。
隣のおじさんと談笑したり、お参りに来た方に「君はどこから来たのか」とか「君は日本人かね」とか話しかけたりしておりました。私はおじさんに「この方は私たちの大本山總持寺の禅師様を勤められておられた方でこのように気軽にお話を出来る人ではありませんでした。」と言うとおじさんはそのような人には見えないし、そんなことはないと思うと失礼なことを面前で言う始末です。しかい、老師は意に介さずひょうひょうとしておりました。又、参詣者に板橋老師は曹洞宗の禅師様でした方ですよ、知っていますかと尋ねると、知らないと、そのほか尋ねた人も全員知らないと答えました。その時も老師はひょうひょうとしておりました。ただ年老いた禅僧のひとりとしか眼に入らないのではないでしょうか。
御誕生寺は俗称「ねこ寺」として有名になり、ねこに会うためにわざわざ地方そして県内各地より年間二万人の人達が尋ねる寺だそうです。
板橋老師の言葉に「風にゆられて鳴る風鈴のように、悲しいときは悲しめばいい」と風鈴は風が吹くとちりんと鳴ります。風が強く吹くとジリンジリンと激しく鳴り、弱く吹くとチリンチリンとかすかに鳴り響く。風にゆられて鳴る風鈴のように、無心に生きたいなあと思うなら、頭をあまり使わず、からだがわかっている生き方をすることです。と申しております。
地位や名声にこだわらず、おごることもなく、何をかたるでなく、ひょうひょうとして生き、自分が何者であるかを知り、自分を生きる。そこには、自然と様々な人が集まる、そして指導者として、人としての坊さんを育て、それが自然と形になり、次の世代へ正しく伝わっていくのではないでしょうか。機会があれば是非、御誕生寺に行くことをお勧めいたします。