親の恩

恵那市山岡町 林昌寺 住職 宮地 直樹

ゴブハサミムシという昆虫がいます。このメスは卵を生むと丁寧にそれを守り、さらに外敵からそれを守るために一切そばを離れません。孵化をすると自分の身体を子供たちに食べさせます。食べられている間にも外敵を気にしてその命が絶えるまで動き続けているのです。こうした営みがこの種を守ってきました。こうした営みは人間に置き換えれば大変残酷なようにも思えますが、これに近いような種を守るための営み、これは様々な昆虫、動物、そして我々人間にも当てはめることが出来ます。

『父母恩重経』というお経の中に「究竟憐愍(くきょうれんみん)の恩」というのがございます。これはどんな状況にあっても親は子供のことを思い 憐れむというご恩であります。己、生ある間はこの身に変わらんことを思い、己、死にさいてはこの身を守らんことを願う。亡くなってもなお、あの世から残された私達を常に見守ってくれている。

姥捨て山伝説の中に「自分を担いで山に捨てに行く子供が、帰り道、道に迷わないようにその後ろで枝を折っていく」というシーンがございます。どんな状況にあっても自分よりも子供という親心であります。

そうした親の恩に報いるためにも、私達は親から学んできた学びというものを、後世に伝える役割がこざいます。そしていつかは我が身、残された我々をあの世から見たときに、悲しまない生き方、暮らしぶりをしていくということ。現在、社会が生み出す猟奇的な犯罪があとを絶ちません。こうした時代だからこそ、意識的につながってきた命に対して学ぶ必要があるのです。