「『恩返し』と『恩送り』」

飛騨市 長久寺 住職 守田 智昭 師


「恩返し」と「恩送り」という言葉があります。
どちらも恩に報いる大切な生き方ですが、その意味には少し違いがあります。
恩返しとは、自分に親切をしてくださった人へ感謝を返すことです。育ててくれた親に孝養を尽くすこと、お世話になった方へ感謝の気持ちを表すことなどが恩返しです。
しかし、私たちはいただいた恩をすべて返しきることができるでしょうか。
親からいただいた命や愛情、ご先祖さまから受け継いだご縁、仏さまの慈悲。これらはあまりにも大きく、返そうとしても返し尽くせるものではありません。また、恩を受けた方がすでに亡くなっておられることもあるでしょう。
そこで「恩送り」という考え方があります。
受けた恩を直接返すことができないなら、その恩を別の誰かへ送るのです。
親から受けた愛情を子どもや孫へ送る。苦しいときに助けてもらった経験を、別の誰かを支える力に変えるのです。そうして恩のバトンを次の人へ渡していくのです。
恩返しは感謝の心です。
恩送りは慈悲の実践です。
どちらも大切ですが、返しきれないほどの大きな恩をいただいている私たちは、恩返しの心を持ちながら、その恩を次の人へと送っていく。そこに仏教の温かな生き方があるのではないでしょうか。
今日、自分が受けた恩を一つ思い出し、それを誰かへの優しさとして送ってみましょう。それが仏さまへの何よりの恩返しになるのです。