背中があったかい

飛騨市 長久寺 住職 守田 智昭 師

皆様は背中が温かくなったことがありますか?

私は、ある檀家さんのお家に、お経を読みに行くと、必ず背中が温かくなるのです。

「出迎え三歩、見送り七歩」という言葉がありますが、「お客様を迎え入れる時には、こちらから三歩進んで迎い入れ、お見送りする時には、七歩進んでお見送りをする」という、日本のおもてなしの精神を現した言葉です。

この諺のように、そのお家の方々は、お約束の時間前には外に出て、私の来るのを待っていて下さるのです。また、帰る時には、私の姿が見えなくなるまで、じっと見送ってくださいます。

すると私の背中は、不思議と温かくなってくるのです。

ただ、じっと見送られているだけなのに、その、深い思いやりと優しさが、私の心にじーんと伝わってくるのです。

真心を相手に伝えるには、特に言葉は無くても届けられるのだと、また、深い思いがあれば、眼差しだけで、人はこんなにも、温かく幸せな気持ちになれるのだと、教えていただく事が出来ました。

私もこのご家族のように、人様の背中を温かくならせてあげられる、そんな優しく思いやりのある、深い眼差しを育ててゆきたいと思いました。