美濃市 永昌院 副住職 高橋定佑 師
こんにちは。今日は「目に見えないもの」についてお話ししたいと思います。
皆さんは「いのちのつながり」について考えたことがありますか。私は、以前教員として中学校に勤務していた時、子どもたちに「いのちのつながり」について考えてほしくて一冊の絵本を紹介したことがあります。『ヌチヌグスージ』という本です。「ヌチヌグスージ」とは沖縄の方言で「いのちのまつり」という意味だそうです。
舞台は沖縄のお墓参り、島独特の大きなお墓に親戚一族が集まります。絵本の中で、おばあさん「おばあ」が坊やに、「坊やにいのちをくれた人は誰ねー?」と聞くと、坊やが「それは・・・・・・、お父さんとお母さん!」と答えます。
いのちのつながりについて、独特で親しみのある挿絵と言葉で展開され、坊やの頭の中ではお爺さん、お婆さん、ひいお爺さん、ひいお婆さん。さらにその前へと、いろんなご先祖様の顔がグルグル回り、つながりの数が2倍、2倍、さらに2倍と増えていきます。
そして、つながりあう一人ひとりの顔が、紙面いっぱいに無数に描かれ、広大無辺ないのちのつながり、広がりを感じることができます。
絵本の中では、いのちのつながりを数として取り立てて見ることはしていませんが、あえて数字で見てみると
その数は10代で2000人を超え、20代遡るとご先祖さまの数はなんと200万人を超えます。
物凄い数です。しかも、そのご先祖さまそれぞれに、今私たちが生きているのと同じように、喜びや悲しみ、苦しみがある中でつながれてきた。そうやって考えると、素直に感謝の気持ちが湧いてきます。
つながっているのは勿論、いのちだけでありません。
私たちは目に見えるもの、誰が見ても分かりやすいものに意識が偏りがちで、目に見えないものはあまり意識されません。しかし、その目に見えないもの、存在によって、確かに私たちの日々の営みは支えられています。
社会環境の変化が著しい時代だからこそ、その変化に振り回されることなく、ご先祖さまを始め、目に見えないものに想いをいたし、その複雑な絡み合いから、時には苦しみに近いものがあったとしても、少しでも感謝につながる気持ちをもてることが大切です。
そうすることよって、私たちはよりよい未来を描いていくことができるのだと思います。