「迷惑を許す」

揖斐川町 月桂院 副住職 杉山秀宣 師

今の日本は超高齢化社会となっており、65歳以上の方が人口の3分の1にまで増えております。当然、高齢者の人口が増えるという事は、介護が必要な高齢者も増えるということになります。人は誰しもが老い、そして誰かのお世話になるのです。

私は僧侶の傍らで介護保険のケアマネジャーの仕事を担っております。普段から高齢者の方やご家族の方とお話をする機会が多くあります。

お話を伺うと「家族に迷惑を掛けたくない。施設に入った方が良いのかも知れん」という言葉がよく聞かれます。その方は自分の存在が家族に迷惑を掛けているのではないかと思い悩まれるのです。ご家族の方は「そんな事はない。迷惑だなんて思わないで」と言われます。

私は、人は周りに迷惑をかけずに生きる事はできないと考えます。生きている以上、必ず他人に迷惑をかけているのです。それを許される事によって生きさせてもらっているのではないでしょうか?インドでは子供に「人に迷惑をかけるな」とは教えないそうです。「人は迷惑をかけるものだから、他人の迷惑を許す様に」と教えるそうです。自分が迷惑をかけている事が解っていれば、他人の迷惑を許す事が出来るのです。

私は、この様な相談を受ける時には「お互いがお互いを想う気持ちがあって悩まれているのであると、その気持ちが相手に伝わる事で、結果が自宅で介護してもらう事になっても、施設で介護してもらう事になっても、それが最善の選択になります」とお伝えして安心していただきます。

皆さんも生活のどんな場面でも、相手の事を考え迷惑を許す思いやりのある言葉(愛語)を伝える様にしてはいかがでしょうか。人との関係や大きく言えば社会環境が変わって来るかも知れません。