「無常。桜は咲きやがて散る」

岐阜市 吉祥寺 住職 志比道栄 師

年々桜の開花は早くなり昔のように入学式を待たずに、3月中には満開を迎えるようになりました。

昔、越後の良寛和尚さんが「散る桜残る桜も散る桜」と亡くなる前にこの歌を詠まれました。これは世の中の物は常に変わっていく。「いのち」ある物は必ず終わりを迎える。お釈迦様の「諸行無常」の教えを歌にされたものです。

人が変化していくとは、時間と共に年を取り老人になり、そして誰しもがやがて死を迎える。時には病気になったり、思いもしない生活を余儀なくされる。

桜の花で例えるなら、暖かな日差しや水に恵まれて一本の枝に蕾として芽吹き、青空のもと周りの花と共に花弁を開いてゆく。時には春の嵐に強く吹かれようともじっと花を保ち、やがてどの花も散ってゆく。

私達が桜の花を愛するのは、蕾の時・満開の時・散りゆく時の姿に一瞬一瞬の桜の一生懸命な「いのち」を見るからである。

幼き時は戻らない。老いることは避けられない。「生老病死」を苦しみと捉えなければ、私達も桜のように深い人生が送れるのではないでしょうか。