「合掌の作法から気づいたこと」

岐阜市 林陽寺徒弟 岩水峰雪 師

私達の生活の中で合掌をすることが時々あると思いますが、皆さんは、合掌の形をきちんと意識したことはありますか?

先日、ある友人が合掌をする時に、親指から小指まできちんと手を揃えてから息を調えていくと心が落ち着きますと話してくれました。普段そこまで合掌の手を意識したことがなかった私は彼女に習い、合掌の時に指が離れている時と、離れていない時の息と心の感じ方を試してみました。すると、どうでしょう。指が離れている時はどことなく気持ちが外側を向いて息も意識しづらく心は注意散漫としてきます。逆にきちんと指を揃えた合掌は、息が意識しやすく気持ちも内側に集中していき、この瞬間に心が向きやすくなっていきます。修行中によく合掌の小指が離れていることを指摘されていたのですが、こういう大切な事が隠れていたのだと恥ずかしながら、ようやく知ることができました。

禅の世界では、「調身・調息・調心」の教えを大切にします。まず形という作法を重んじます。そして、次に息を意識していきます。その結果、心が調い自分自身を見つめる力が生まれていきます。なぜ、一番最初に形を大切にするかというと、最初から心を調えようとしても、思考が邪魔をして調えられるものではないからです。「身体、息、心」この3つは密接に繋がっています。「姿勢を調え」、「息を調え」、「心を調える」、この順番にも意味があるのです。ステップバイステップ、一歩ずつ着実に事を運ぶことで心は落ち着き、自らを見直す力が生まれてきます。

お盆やお正月には合掌をする機会も多いと思います。皆さんも合掌をする際には手の合わせ方をちょっと意識してみてはいかがでしょうか。