高山市 善応寺 副住職 中井 康博 師
2024年元日、能登半島を中心に大きな被害をもたらした令和6年能登半島地震、そして同年9月の奥能登豪雨。度重なる自然災害から、早くも二年半が経ちました。
私は現在、石川県輪島市に身を置き、皆さまのご支援ご協力をいただきながら、支援活動に携わらせていただいております。
発災直後、輪島市を訪れた際には、言葉を失うような光景を前にしました。寒さで手はかじかみ、断水が続く厳しい環境の中で、「自分には一体何ができるのだろうか」と、無力さを痛感したことをよく覚えております。
さらに奥能登豪雨では、二重被災により心が折れてしまった方を前に、どのような言葉をおかけすればよいのか分からず、苦しみに直面する方と向き合うためには、自らが智慧を学び続けなければならないと深く感じました。
しかしそのような中で、支援に来ているはずの私自身が、能登の方々に勇気づけられ、多くの学びをいただいております。
「能登はやさしや土までも」という言葉があるように、温かい言葉に幾度も救われ、また多くの支援者にも助けられてきました。互いに見返りを求めず助け合う姿に、「三輪空寂」の教えを実感しているところです。
また、「能登のために何ができるでしょうか」と尋ねられることがあります。
その答えは人それぞれではありますが、大切なのは、自分自身に何ができるかを問い、できる範囲で行動していくことだと考えます。
その積み重ねこそが、内にある仏性を目覚めさせ、開き、発こす「開発」につながるのだと実感しております。
どれほど「助けたい」という慈悲の心があっても、正しい智慧が備わらなければ、独りよがりの行いになってしまう恐れがあります。
「慈悲」と「智慧」。この二つの両輪がバランスよく備わるよう精進していきたいものです。
能登で本堂が倒壊したある住職が、こんな言葉をおっしゃっていました。
「せっかく助かった命。本堂がなくとも、自分のいるところに人が集まり、仏教を通じて助け合っていきたい。たとえ絵に描いた餅であっても、その志を糧として生きていきたい」
この言葉に、大きな力をいただきました。
どうか今日を機に、身近なところに目を向け、自分にできる一歩を考えるきっかけとしていただければ幸いでございます。
