全宇宙の命への祈り

美濃市 善応寺 住職 雲山 晃成 師

私たち曹洞宗のお坊さんが坐禅をするとき、釈迦如来坐像の姿を参考にして坐ります。多くの寺院の須弥壇上中央にいらっしゃるお釈迦様を見ていただくと想像がつくかと思います。足を組んで結跏趺坐をして下っ腹のところに両手を重ねて組んでいます。このとき両親指をくっ付ける様にします。この手の組み方を法界定印と言います。この形を作ることには意味があるのですが、この印は宇宙を形取ったものであると言われています。

宇宙の形なんて我々は見たこともないし、形なんて宇宙から飛び出さない限り見ることはできません。これは見るとか見えないとかという問題ではなく、宇宙の中心に自分はいるのだということです。

この宇宙を構成している自然現象、身近なものには山や川、空気、家や人いろんなもの同士がこの宇宙には存在していて、別々なものではありますが、お互いにこの宇宙を共有しながら存在しています。そしてこの存在はとても尊いものなのです。

釈迦如来が坐禅をしているとき、いつもこの尊い存在を想い、宇宙の一切を守りたいという本願の心がこの法界定印という形を作り、お釈迦様の苦行の姿となっているのです。

法界定印をしているお釈迦様は、私たち人間だけを救いたいと考えているだけではなく、宇宙を構成している一切のものが正常であることを祈り続けておられるのです。この釈尊の博愛の心、この心を私たちは法界定印の印相から教えられているのです。