「思いやりの心を大切に」

中津川市 源長寺 副住職 横田英和 師

ここ最近、世の中で色々と大きな出来事が起きております。

その中、紹介させて頂きたいのは上皇后陛下が平成28年熊本地震の折に詠まれた御歌になります。

『ためらひつつさあれども行(ゆ)く傍(かたは)らに 立たむと君のひたに思(おぼ)せば』

こちらの御歌は、上皇陛下と上皇后陛下が被災地を訪問された際、自分たちが被災地を訪問しても良いのかとためらいがありました。しかし、常に人々に寄り添い立つという上皇陛下の強い意思に添い、『さあれども行くと』との思いを詠んだと言われています。

また、テレビなどで被災地を訪問されている映像を拝見しますと、目線を合わせ、皆様の声を聴き、支えとなろうとするお姿に励まされ心が安らかになります。

御歌やお姿が心に響くのも行いの中に仏様の教えが生きているからではないでしょうか。

その教えとは『布施』『愛語』『利行』『同事』という『四摂法』の教えになります。

『布施』とは施し・心や思いを分かち合うこと、『愛語』とは心のこもった言葉をかけること、『利行』とは周りの為になること、『同事』とは自分と他人に区別をつけないこと、それぞれの大切さを説いておられます。

紹介させて頂いた御歌には、被災地や被災者の元に行くことが迷惑にならないかと悩み、それでも支えになればと寄り添うために行くことを決められる『同事』の心、そして相手の事を思い寄り添うために行動する『利行』の心があります。

そして訪問された際のお姿には、皆様の声に耳を傾け、目線を合わせて話され、皆様の境遇を感じてお声をかけられる『愛語』の心があり、皆様に寄り添い、少しでも支えになろうと励まされるお姿には心の施しという『布施』が感じられます。仏様はこれらの優しい思いやりにこそ、世の中を変える力があると説かれています。

私も本年、少しですが被災地のお手伝いにいきました。大きい自然災害の前では一人の力では対処が難しい事が多々あると感じました。思いやりが大切であるということは当たり前の事かも知れません。ですが、実践することは意外と難しいことです。皆様も『四摂法』の教えを実践し、思いやりのある暮らし・地域づくりを考えてみてはいかかでしょうか。