瑞浪市 開元院 副住職 逸見 謙尚 師
4月、春の訪れを感じる季節となりました。
桜が咲き誇り、新しい始まりを迎える方々が多い一方で、この時期は花粉症や年度替わりの忙しさなど、様々な苦しみや悩みが押し寄せる時期でもあります。
ここで、こうした苦しみにどう向き合えば良いのか考えて行きましょう。
仏教には苦しみの苦に諦めるのあきらで「苦諦(くたい)」という言葉があります。人生には苦しみがつきものだという教えです。
この教えは、私たちに絶望を与えるためではなく、苦しみを静かに見つめ、それを受け入れる方法を教えてくれます。
苦しみはただ避けるべきものではなく、人生の中で学びと成長を私達に与えてくれる機会になるはずです。
道元禅師様の教えに「只管打坐(しかんたざ)」ただひたすらに座るという教えがあります。
坐禅は、過去や未来への不安や悩みに捕らわれず、今この瞬間に集中する方法の1つです。
苦しみを否定するのではなく、ただひたすらに苦しみと向き合い、それをただ一つの感覚として見つめることで、苦しみの中にある本質を受け止め、心を豊かにすることができるでしょう。
四月は、新たな環境や変化が多い季節です。その変化が時に不安や緊張を伴うとしても、それは私たちが学び、成長する絶好の機会です。
また、苦しみを経験することで他者への思いやりが育まれます。
自分が感じる苦しみは、同じように悩む他者を理解し、支える心を生むのです。この相手を思いやるその心が、私たちを豊かにしてくれます。
この四月、苦しみを避けるのではなく、その先にある学びを探してみてください。
自分自身と向き合い、季節の移ろいの中で新しい道を見つけ豊かな心で1日1日を過ごしましょう。