「皆にて褒める人もなく皆にて謗る人もなし」

岐阜市 自福寺 住職 古川元弘 師

最近、テレビや新聞・雑誌・インターネットを見ていると「お悩み相談」といった内容の記事をよく目にすることがあります。またお悩みの中でも「人間関係」に関する相談が多いように感じます。

 

・職場で上司の指導が厳しい

・同僚の中でも特定の相手からキツく当たられる

・後輩の指導が上手くできない

・反りがあわない人が多い

 

などなど、みなさん様々なお悩みを抱えているようです。

 

実は私は寺の住職になる前、会社勤めをしていた時期があるのですが、その時に同じような経験をしたことがあります。

人間関係の悩みって本当に辛いですよね。

なんで相手の人は自分に対して辛くあたるような態度をとるのか?

なんか私が悪いことをしているような感覚になってしまい、仕事に行くのが嫌になってしまうことがよくありました。

 

そんなときインターネットのSNSに、こんな書き込みを見つけました。

「そもそも世界中の人、全員から好かれることなんてない。一人や二人の人と人間関係がうまくいかないことなんて当たり前。いちいち気にすることなんてない!」

少々荒っぽい書き込みですが、当時の私には「なるほど!そうだよな!」となんか救われた気持ちになったことがありました。

 

 

仏教をひらかれたお釈迦様の言葉に

「皆にて褒める人もなく、皆にて謗る人もなし」

という言葉があります。

 

どんなに立派な人でもすべての人から好かれることはないし、またどんなに嫌われる人でもすべての人から嫌われることはないという意味の言葉です。

 

人の好き嫌いはその人の都合によるもので、その人によって都合の良い人は好かれますし、都合の悪い人は嫌われます。

 

お釈迦様でさえ3分の1の人に好かれ、3分の1の人に嫌われ、残りの3分の1の人には知られていなかったそうです。

 

お釈迦様ですらそうなのですから、私達が皆から好かれようとしても心が疲れてしまうだけなのです。

 

また逆に「皆にて謗る人はなし」とお釈迦様がおっしゃられるように、どんなに辛い立場に立たされても、全員から嫌われることはありません。必ず誰かがあなたのことを支えてくれるのです。

多くの人が集まれば様々な意見があります。それらの意見が一致することはなかなかないでしょう。皆から好かれることを求めて、無理にその場を取り繕って疲れてしまうよりも、あなたのがんばりに気づいて応援くれる人の事を大切にすることのほうが、良いのではないかと私は思います。