「感謝の言葉」

中津川市 大林寺 徒弟 村瀬弘信 師

先日私が電車に乗っていた時の事です。マスクの着用も個人の判断となり、昔よりも車内の人が多くなってきたな。なんて考えておりました。

2人がけの席に1人で座っていたのですが、ある駅に着いた時1人の女性が電車に乗り込んできました。「失礼します」そう言って私の隣の席に座りました。しばらく経って、目的の駅に着いたのか席を立ちました。その時その女性は私に「ありがとうございます」と言いました。ですが、私には感謝される様な事をした覚えはありませんでした。なぜだろう、1人で二つの席を使っている様に見えたのかな。などとしばらく考えておりました。

仏教の中に、「愛語」という言葉があります。相手に対して優しい言葉をかけましょうという意味です。

普段からお坊さんとして心掛けている言葉であったのですが、すぐにそれを思い出す事が出来なかったのです。そればかりか、相手がなぜこんな事を言うのだろうと疑問に思ってしまったのです。

それに気づいてから、自分の未熟さを感じました。

ですが、疑問を抱いていた心は幸せな気持ちになりました。

あの女性はきっと「愛語」という言葉は知りません。ですが、知らなくてもそれを実践できる方だったのです。

今思うと、姿や立ち振る舞いまで素敵な人だった様に思えてきます。

「愛語よく廻転のちからある事を学すべきなり」

愛語を使うことは世界を変える力があると道元禅師様はお示しになられております。

常日頃から感謝と優しさを心掛けて生活をしていれば、いつかより良い人間になれます。そしてその行動は周りも巻き込んでいく事でしょう。まずは自分から日々の生活の中で「ありがとう」これを意識して生活してみてはいかがでしょうか。