高山市 素玄寺 住職 三塚泰俊 師
近年は、私の住んでいる高山市にも連日多くの外国人観光客が訪れます。
先日、若いアメリカ人男性の方が、ご朱印を求めにお寺にお越しになりました。お互いに
日本語や英語を交えてやり取りをし、ご朱印帳をお渡し致しました。その方はお帰りにな
られる時、直立不動でとても綺麗な合掌をしながら深々とお辞儀をされ、日本語で「有難
うございました。」と御礼を言われました。
私は、そのお姿を拝見し、とてもすがすがしい気持ちになりました。それと同時に、
僧侶である自分は、その方のような丁寧な合掌と相手に対する御礼ができているのかなと
、少し恥ずかしい気持ちになりました。
仏教で合掌とは、右手は清らかな仏様を表し、左手は至らない自分自身を表し、その
両手を合わせることで仏様と心を一体にすると言われており、仏様への帰依の姿です。
また、私たちは普段の生活で合掌する機会が多くあります。ご先祖へのお参り、食前食後
の挨拶や、御礼やお詫びをする時など、感謝や有難い気持ちを表す姿です。
永平寺などの修行道場では、修行僧がすれ違う際に、合掌をしてお辞儀をします。
それは「あなたは仏様になられるよう修行を積んでおられる尊い方です。私もそのように
なりたいです。」というお互いに尊敬をしている心の表れの行為です。
私たちは、日々の生活の中で、様々な方々と出会っています。お互いの存在を敬い、
合掌ができない場面なら、心の中で「ありがとうございます。」と合掌をし合えるような
日々を過ごしてゆきたいものです。