瑞浪市 宝林寺 副住職 西尾 英晃 師
5月に入って新しい年度の始まりから一か月となりました。新しい環境に身を置かれるようになった方々も大勢おられることかと思います。そうした中で今一生懸命に頑張っている方もいれば、悩みを抱えている方もおられると思いますが、そんな皆様に向けて今日は禅の言葉を一つ紹介させていただきます。
「水を掬(きく)すれば月手に在り、花を弄(ろう)すれば香(かおり)衣に満つ」
言葉としての意味は「月夜に水面に映る月を両手で掬(すく)うとその手の水に月が宿り、
花を摘んで遊んでいるとその香りが知らぬ間に衣服に染み込んでいる」といったものになります。天然自然の風流なものと戯れる何とも美しい情景を表した言葉ですが、はてこれが仏教や禅とどう関係するのだろうと思われるかもしれません。
様々な解釈がありますが、月と花は悟り・仏の教えの象徴として用いられ、水を掬う、花を摘むという天然自然の清らかなものに触れる行為は修行や善行の象徴と考えられます。
それを踏まえて意訳しますと、「遥か彼方にある月も掌に掬った水面に宿るように、仏は実はあなたのすぐそばにある。花の香りが自然に衣服に移るように、清らかなものに触れているとその影響は知らず知らずのうちにあなた自身に身に付いていく」といったところになります。
ここで大切なのはあなた自身が手を伸ばして自分の意志で触れることです。あなたの助けになるものは、あなたが手を伸ばせば実はすぐそばにあります。しかしながら、そうしたものはあなたが手を伸ばした時に初めてあなたに届くのです。
思いやり、優しさ、親切そうした善きものに触れてあなた自身もそうなっていけると
また次の誰かにその善きものは伝わっていくことでしょう。香りを受け取るだけでなく周りへ分け隔てなく与えていけるようになりたいものです。