「やわらかに」

関市 広福寺 住職 紀藤 昌元 師

身体が柔らかい人はケガをしにくい、頭が柔らかい人はものごとを上手く進められる。「やわらかく」いるということは、私たちが生きていく上でのひとつの大切なコツであると思っています。

やわらかく、このことについて道元禅師様は次のように示されています。「ただまさにやわらかなる容顔をもて、一切に向かうべし。」ただひたすらにやわらかな表情で、すべての人や物事に向き合いなさい。こんなふうに私はこの教えを受け止めています。

今年は元日からの大地震に加え、いくたびもの災害が多くの人たちの日常を奪い、私達自身の身の回りも笑顔でいることなどとてもできないような出来事や状況で溢れています。いつでもやわらかな表情で、すべての人や物事に向き合う。実はこれほど難しいことはないのかもしれません。しかし、困難や苦悩の中にあっても、それを乗り越えて笑顔であろうとする。そういう力が私達には備わっている。そのことを忘れないで欲しい。そう道元禅師様は暖かく励まして下さっているのだと私は思います。

いつもやわらかな表情で人に接するということは、お布施のひとつでもあります。やわらかな表情は相手に安心を与えることができるからです。そして、いつもやわらかな表情であろうとする、その行いは自分自身の中に強くて大きい心を育てる修行でもあります。強くて大きい心がなければ、いつもやわらかな顔でいることはできないからです。

いつか誰かの笑顔にあなたが癒され元気付けられたように、あなたの笑顔に癒され元気づけられる人が必ずいます。

「ただまさにやわらかなる容顔をもて、一切に向かうべし。」

この教えを胸に、いつかどこかで笑顔でお会い出来る日を楽しみにしております。