美濃市 安毛 永昌院 副住職 高橋 定佑 師
この夏、高校野球やオリンピックを夢中になって観た、という方は多いのではないでしょうか。私もその一人で、テレビにかじりつき、毎日毎日観戦をし、多くの選手の姿に元気づけられました。
なぜ、高校野球やオリンピックはこれほどまでに、私たちを惹きつけるのか。
それは、この一瞬のために必死になって力を尽くしてきた、彼らの努力を容易に想像することができるから。私たちは、オリンピックや甲子園といった「遠い目標を持ち、今、ここを頑張る」その生き方が、決して簡単ではないことを知っているし、それにどこか憧れを感じているからではないでしょうか。
以前、私が学校に勤めていた時、最も尊敬する先生の一人がこんなことを仰っていました。
「1位を目指して練習しても、1位になれるのはただ1クラス。目標を達成するのは困難なことだと分かります。でもその困難に向かって汗を流す人でありたい。本当のねらいはそこにあります。」
その先生が担任した学級は、体育大会や合唱祭で1位を取ることは一度もありませんでしたが、生徒たちの顔はいつも輝き、生き生きとしていました。思えば、彼らはもっと先を見ていたのかもしれません。
私たちは、目標の達成に向け頑張っていても、苦しいことがあると、辞めたいと思ったり、逃げ出したいと感じたりするものです。また残念なことに、望んでいた結果が得られないことが多くあります。しかし、私たちが生きていくうえで、本当に大切にすべきことは、1位になることなどの結果ばかりではありません。遠い目標に、困難に向かって汗を流す、その過程そのものが大切なのだと思います。
遠い目標は、漠然とした抽象的なイメージかもしれないし、鮮明で具体的な課題かもしれません。決して簡単ではないけれど、遠い目標に向かって、ただひたすら「今、ここを頑張る」。
この夏、懸命に輝いた選手たちから学べる生き方が、ここにある。そんな風に思います。