薫習

海津市 春光寺 住職 横井晋司 師

仏教には、薫習という言葉があります。

「くん」とは、かおるという字を書き、香を焚くという意味です。「じゅう」とは、ならうという字を書きます。

意味は、お香を焚いたにおいが衣に移るように、その人の体、口、心の行いが知らず知らずのうちに影響を与え、または、逆に影響を受け、その人の行いを形作っていくことを意味します。

例えば、方言があります。私には、小学生になる子どもがいます。子どもが普段話す言葉は、方言です。誰かが教えたわけではなく、自然にその意味を理解し、使いこなしています。これも薫習です。

しかし、良いことばかりではありません。ある時、子どもが寝転んでお菓子を食べていました。妻に注意された子どもはこう言ったのです。

「お父さんも寝転んで食べているのに。」

私は、はっとしました。子どもの手本になろうと良い行いを心掛けていたつもりでしたが、悪い行いもしっかり見られていたのです。

これは、子どもに言えることだけではありません。自分の行いは、いつ、どこで、誰に見られているかわかりません。人に悪い影響を与える行いをしていないか、日々、反省し、人に良い影響を与える行動を心掛け、生きていきましょう。