自灯明・法灯明

各務原市 桃春院 住職 清水 宗元

お釈迦様は亡くなる前、「これから何を頼りに生きていけばいいのでしょう」と嘆き悲しむ弟子に、

「自らを灯明とし自らを頼りとして,他を頼りとせず,法を灯明とし,法を頼りとして,他のものをよりどころにせずあれ」と語られたといいます。

「自灯明,法灯明」の教えとして有名な言葉です。「灯明」とは,あかり,ともしびのことです。

とかく私達は、人のことに左右されがちです。特に近年は,高度情報化社会になり,情報が 溢れかえる中で,「TVでいってたから。人気番組でいってたから」,などとまちがった情報を鵜飲みにしてしまい、結果「だまされた」気持ちになってしまったなどというもよく聞く話です。

また先行きの不安な情勢で、「勝ち馬に乗る」,大きい方、強い方についた方が安心という心のもと,権威・権力のある人の言葉に安易に追随する,そういう風潮もあるような気がします。

 そしてまた、こちらも思うような利益を得ることができず、「だまされた」という気持ちになってしまったというのもよく聞く話です。

 結局は人の言葉を鵜飲みにして頼るのではなく、自分で考え自分で何が正しいかと見定めること、そしてそれができる自分を確立していくことが大切なのです。

 それとお釈迦様は、「自灯明」と同時に「法灯明」とも教えられています。

 「法」とは,仏教の教え,すなわち物事の真理,本質の事です。

 仏教を学ぶこと,物事の真理,本質を学び知ることが、あやまった情報や間違った言葉におどらされず、自分の考えで正しく物事を見定められる,そういう自分を確立していく,そういう事を教えられています。

 情報が 溢れかえる現代社会,そして権威や権力のある人の言葉に安易に追随する風潮がある現代社会だからこそ

「自灯明・法灯明」

 お釈迦様の最後の言葉をかみしめたいものだと思います。