中津川市 萬嶽寺住職 皮地昇雲 師
私のお寺の近所には保育園があります。通園の子供たちがニコニコしながら「おはようございます」と言ってくれるのですが、清浄無垢なとても良い笑顔なのです。だれしも笑顔にならずにはいられない微笑ましい光景です。
笑顔で人に接することは、仏教では他人に対する大切な施しです。和顔施と言い、たとえお金や物が無くても、誰でもすることができる立派な布施行(無財の七施)の一つなのです。言い換えれば、仏の清浄なる心の施しと言えるかもしれません。
ところが、最近はパソコンや携帯電話が普及して、笑顔どころかお互いの顔も見ずに会話をすることが当たり前になりつつあります。
以前よく流れていたファーストフードのCMに、こういうものがありました。客が店員に「スマイル下さい」といって、最後に「スマイル¥0」というキャッチコピーが出るのです。笑顔までも商品の一つになってしまった様な、笑顔が当たり前ではなくなっている現代の世相は、それだけ殺伐としているということなのでしょうか。
この様な御時世だからこそ、私たちは清浄な、心からの笑顔にどれだけ心救われることでしょうか。
幼子の次第次第に知恵付きて 仏に遠くなるぞかなしき(読み人知らず)
という句があります。私たちは成長するに従って、良い悪い、好き嫌い、欲しい欲しくない、色々な考えが生じ、本来持っている清浄な心を見失いがちです。しかし、心からの笑顔に接した時、お互いが見失いかけた仏の心に気付くことができるのではないでしょうか。どうか、皆様も多くの人に慈しみを持った、仏様の笑顔を施してあげて下さい。