毎日お参りに来られるお年寄り

各務原市 宝林寺 住職 石屋 義弘

寺庭のなかで作務をして居りますと、ほぼ毎日お参りにこられるお年寄りがおいでになられます。ゆっくりゆっくりと参道を歩き本堂の戸を開け正面の経机の前に座り、りんを二つ鳴らし、手を合わせて祈り、さいせんを入れて行かれます。その静かな姿は寺の観世音菩薩に全てをまかせてお参りをされて居るようです。それを終えると寺の境内地に有る、秋葉神社と稲荷神社にゆっくりとお参りになり境内地を一廻りされるようにしてお帰りになります。

そうその一時あのお年寄りには、さとりきった状態になっておいでになっていたのではないでしょうか。仏前に座り座禅をするのではなく、経の一巻も読まれる訳ではないのですが、その静かな顔は全く安心のゆったりした姿でした。お釈迦様が示された細いさとりの道と道とをはずれないように、世俗にたらしおかれたくもの糸の登り方をおしえと下さった道元禅師様の深い心を思い欲望をコントロールできる人間になれ、そうすると自由になれるということです。そして有能ですなお、端正であれ、恵い言葉を語って、いつも優しく、心に笑みををもち決していばらのない、そんな人間になれと慈しみ教え下さっているのです。

誠につたないお話を聞いていただきありがとうございました。