感謝する心

関市 永昌寺住職 鬼頭賢定

私たちが生きていくのに一番大切な物は沢山色々とありますが、その中でお水についてお話をします。私たちは、常に水を大切にし、感謝して毎日を過ごしているでしょうか。毎日、水を無駄に使っているのではないでしょうか。

昔、禅寺に宜牧というお小僧さんがいました。或る夕方お師匠さんが庭にタライを出して湯と水を汲んでお風呂の代わりに体を洗おうとしていました。少し熱かったので「おい宜牧そこの桶の水を持ってきておくれ」と言いました。宜牧は「はい」と返事をして桶を手に取り、中を見ると少し水が残っていたので、何気なく庭に捨ててしまいました。すると行水をしていたお師匠さんが大きな雷のような声で「コラッ宜牧、今、水を捨てたな、捨てた水を拾え」と、どなられ、びっくりした宜牧は、どうやっても拾うことが出来ません。これはお師匠様が「捨てた水を拾え」と言われたのは、水と一緒に捨てたお前の心を拾えということです。何の気なしに物を捨てるお前の心をもう一度じっくりと振り返り、すべての物の命を大切にする仏様の心を常に忘れないように自分のものとして修行せよ、と言う有難い教えなのです。

この宜牧少年が、この教えを一生のいましめとして、感謝の心を忘れず修行し名前も水に関係をもつ滴水と名付けられ立派な禅寺様となられ多くの教えを残されたのです。

私たちも、多くの物に支えられ生かされていることを忘れずに感謝の日々を過ごしましょう。