御供養すること、生きて行くこと

大垣市 全昌寺 住職 不破 英明

本年2015年は阪神・淡路大震災から二十年という節目にあたる年です。神戸の街は多くの方の願い・努力により復興をとげていますが街を襲った地震による悲しみを市民の誰もがわすれてはいません。

当時私は神戸市にて学生生活を過ごしていましたがそれまでの価値観を根本から覆すような出来事でした。震災のために友人・知人を無くしあらためてこの世の無常というものを考えずにはいられませんでした。

なにかしら同じ気持を共有したいという思いから御家族をなくされた方々の手記を読ませていただくことがありましたが、その中で大事なお子様二人を震災で亡くされたお父様のお話が強く印象に残っています。そのお父様は毎日お子様二人分の食事をご仏前にお供えし続け、自分の心の中で二人のために灯をともしているので、二人は今も自分の心の中で生き続けていますとおっしゃられていました。

私たちが大事な家族をなくしたときに、故人を忘れないよう自分の心の中にその方のための場所を作って差し上げ、そこに灯をともし続ける。そして心の中のその方とともにこの無常の世を丁寧にしっかりと生き抜く。それが故人への一番の御供養であり、また仏様とともにある私たちの姿なのです。