当たり前のことに感謝して

揖斐郡大野町 智量院 住職 杉原 重明 老師

勤めを辞めてから、十数年が経ちました。何か、自分を育ててくれた地域のために、少しでもお役にたちたいと考えていましたが、その間、全く予期しない仕事が次から次へと出てきました。自治会の仕事から、退職した会の仕事、社会福祉の活動、文化財の保護活動と、必要で多義にわたって舞い込んできました。月の半分以上はそれらの仕事に出かけます。そして、保育園から老人クラブの人たちまで多くの人との出会いがあり、出会いを通して教えられたり、学ぶことが多く、疲れも出てきますが、明日への活力となって頑張ることができています。四十年余の勤めは、組織の中で生き、組織の中で生かされ、喜びも苦しみも多く、自分なりに頑張ってきました。六十歳過ぎたのちは、その人の本当の人柄と人間性になって現れてきます。世の中には、このことに気がつかないでいる方も多くいます。私は、せめて与えられた人生を、親や先祖に感謝して、当たり前のことが当たり前になってできるよう日々過ごしたいと考えております。人が尊いのは、誠実であるからです。誡実は一切の徳の根本です。その誠実を守り通す勇気と信念が必要です。まだまだ、学ぶことが多い中、思いやりのある言菓で、人のために何かをしたい、当たり前のことが当たり前にできるよう、見返りを求めず、常に感謝を忘れず、自らの心を耕し、少しでも役に立ちたいと考えております。