希望の灯火

増徳寺 住職 長宗一陽

ある日、庭を掃いていますと「こんにちは、お参りさせてください」と声がします。振り向くと、母親と四・五歳程の元気な女の子の姿が見えました。お参りが終わると、本堂から出て来られ、話を伺いました。「この子は仏像がとても好きです。子どもと出かける時はいつもきまってお寺を探して出かけます。」と言われました。「仏像が好きだから手を合わせるのですね、将来が楽しみです。」と話しました。

道元禅師の「渓声山色」この章は仏道を学ぶ者の心構えを説かれています。「仏祖を仰観すれば一仏祖なり」この言葉は「仏様に憧れたら、そのときはもう仏様になっている」「仏像に憧れたら仏像に入る」「友達に憧れたら友達に入る」と言う意味です。又その裏側では、悪しき行いに憧れたら悪に入る。何事も憧れるだけで、もうすでにその中に入っているのです。

このお子さんは、仏様に憧れ仏を心の中に抱き、仏様と共に過ごす時間が幸せなのだと思います。普段何気ない生活の中にも希望を持ち、お話しているニコニコして明るい子供でした。

私たちの生活の中で、恐怖心に襲われたり、怖い出来事が起きたときは、仏様を思い出してください。仏を思い出せなければ、お釈迦様の言葉を思い出してください。言葉を思い出せなければ、親・兄弟・仲間を思い出してください。