大好きなお寺参り

飛騨市古川町 林昌寺 住職 中川芳秀 師

隆君は小学一年生の男の子です。その日は、一昨年亡くなったおばあさんの参回忌のお参りに家族でお寺にやってきました。

これまで、お葬式や、四十九日の法要、一周忌や納骨のご供養と、何度もお参りに来るうちに、すっかりお寺にも慣れた様子で、本堂での読経が終わるや否や、お寺の中を駆け回っていました。

おばあさんが亡くなった時、保育園に通っていた隆君も、今は一年生。一回りも二回りも大きくなっていました。そこで私は、「隆君、大きくなったら何になりたいんだい」そう質問しました。すると隆君は大きな声で、「ラーメン屋さんと・・・お坊さん!」そう答えました。私は驚いたと同時に、不思議に思い「どうしてラーメン屋さんとお坊さんなの」ともう一度聞きました。すると「どっちのお仕事も楽しそうなんだもん」と笑顔で答えました。おいしいラーメンを作るお仕事が楽しそうなのはわかります。しかし、悲しいお葬式や法事を見てきた隆君にとってお坊さんが楽しそうに見えるのは・・・と益々不思議に思いました。

しかしよくよく聞いてみると、法事の度に、きれいな服を着せてもらい、家族や、親戚とお出かけをし、おいしいご飯を食べられるお寺へのお参りは、隆君にとってとても楽しいイベントだったのです。

ご先祖様を供養する法事を勤めることが出来るというのは本来とても幸せなことです。亡くなられたご先祖様が残してくださった、家や家族があり、そして何よりもそのご先祖様に頂いた自分の命というものが、絶えることなく又、脈々とつながっている。だからこそ、家族が皆でお参り出来るのです。

隆君には、大好きな家族みんなで、お寺へ出かけることがとても楽しみだったのでしょう。きっと、亡くなられたおばあさんも、そんな隆君やご家族の姿を見て、天国で微笑んでいらっしゃるはずです。

頂いた命の尊さに気付きましょう。素直な心で手を合せ、御先祖様へ感謝の心を伝える、そんなご法事を勤めて頂きたいと思います。