分け隔てなく

関市 正林寺住職 荒田 則翁

今年もお盆の季節がやって参りました。皆様方それぞれにお盆を迎えられることと思います。飯田蛇笏に「信心の母にしたがふ盆会かな」という句がありますが、お子さん、お孫さんと一緒にお盆を迎える準備をされることをお勧めします。思い返してみますと、わたくしも子供の頃、母に連れられて墓掃除に行きました。そうしてご先祖様の話や親戚の話を教えてもらった覚えがあります。田舎では墓地は山の中にあったり、無縁の墓が竹藪に隠れていたりしました。それらは我が家とは無縁の墓でしたが、母は「みんなの仏様だよ」と藪を切り開き掃除をして、お花を供えました。それらを手伝ううちに、自分のお墓を掃除すればよいだけではないことを、母は教えてくれました。

お盆は逆さずりされた状態という、おどろおどろしいいわれによります。それは、お釈迦様の十大弟子の一人、目連尊者の母が、餓鬼道に落ちて苦しんでいました。目連尊者の母はわが子だけを大切にして、他人には強欲でとても意地悪な人であったそうです。そのため地獄に落ちて苦しんでいたのです。そこで目連尊者はお釈迦様に相談すると、修行僧に衣服や食事を分け隔てなく供養しなさい。そうすればお母さんを救い出せるだろうと言われました。私どもはともすると自分だけ、自分の家族だけ、岐阜県だけ、日本だけと思いがちです。そうではなく、分け隔てなく供養する心をお盆を通して家族で学びたいものです。それには家族そろってお盆を迎える準備をしてはいかがでしょう。