停電が教えてくれ

恵那市 円頂寺住職 市岡宜展 師

十日ほど前でしょうか、私どもの住む地域で原因は分かりませんが、2時間ほどの停電になりました。丁度夕食の準備をしていた最中の停電で、妻は大変な思いで子供の食事と入浴を済ませました。
電気が回復して数分もすればまた忘れてしまいますが、電気の有り難さもさることながら、当たり前に満たされていることの有り難さを痛感致します。日没以後の照明がわずかなロウソクの明かり一つだけだったころ、暖を取るものは火だけだったころ、このわずかな明かりがどれほど有り難かったことでしょう。
暖をもたらし、明かりをくれる火は、扱いによっては身の危険にもなり得ますから、先人たちは、火の取り扱いには殊更に注意を払い、火には畏敬の念を持って接していたことでしょう。
便利で快適な暮らしは誰もが憧れるところですが、ロウソクのわずかな明かりに照らされた家族の横顔を見て、寄り添うことで、息遣いや鼓動までもが聞こえてくるようでした。
そこにいて、一緒に生きていく仲間がいることの有り難さを、停電をもって実感致しました。
電気で満たされた暮らしも有り難いものですが、機会がありましたら、テレビも電気も消して、パソコンも消して、一つのロウソクを囲み、ご家族やお子様とお話をしてみてはいかがでしょうか?
わずかな時間ではありますが、節電にもなります。
火の取り扱いには、十分ご注意下さい。