亀と雀

恵那市  盛巌寺  住職 近藤昌弘師

皆さんは、曹洞宗の法要でよく読まれる「修証義」の中に動物が出てくるのをご存じでしょうか。実は亀と雀がでてまいります。

第四章に出てくる窮亀は、中国の亀が報恩した故事。病雀もまた中国後漢の故事からきています。日本にも似た様なお話があります。

亀と言えば浦島太郎、雀と言えば舌切り雀。

今年女優の市原悦子さんがお亡くなりになりました。私にとっての市原さんは子供の頃よく見ていた「まんが日本昔ばなし」の声優さんです。子供の頃は、昔話の中から困ったものがいれば助けるという人としての根本部分を知らず知らずの内に学んでいました。

例えば、道ばたのお地蔵さんに雪が積もっていれば笠をかぶせてあげる。いじめられている亀がいれば助けてあげるなど、良いことをすれば必ず自分にかえってきて、自分の為になる。

その一方で、花咲じいさんや瘤取りじいさんの様に欲をかきすぎると逆にひどい目にあう。そういった何気ない人としての生き方がそれらの中に教えとして生きています。

今の子供たちに話を聞くと、昔話を知らない子が多くいます。

テレビのCMの影響でしょうか。浦島太郎は海辺で歌を歌う人。金太郎は金に細かい人。と思っている子も増えています。

核家族化が進み、お年寄りから聞かされる昔話やその地方に伝わる民話に触れる機会も少なくなっています。ただ、人を思いやる心や、人から受けた恩は返すという日本人の美しい心を子供たちに伝えていくことが大切ではないでしょうか。

お経はお釈迦様が、人が生きていく上で何が大切なのかを示した教えです。「修証義」は道元禅師様がお釈迦様の教えを私たちにわかる様に示されたものです。「修証義」をお読みになる時、そんなことを思い読んで頂ければありがたいと思います。