郡上市美並町 桂昌寺 住職 清水 政文 老師
『お釈迦さまのみ教えの下に』と題して、お話をさせていただきます。
つい一ヶ月前の事です。中国を訪ね千年も昔の名刹を巡拝する旅に出かけました。
山頂の寺の跡を確かめたら、中腹や裾野の寺など十三か所を巡拝しました。険しい獣道、ナビの無い道に迷う大変な旅でした。
中国では約三十年前に文化大革命があり、多くの寺院が破壊されたとの事ですが、現状は、国の支援で再建された寺、今も質素な仮本堂に仏像の祀られた寺、再建の目途がたち、二~三年度には寺が建つと、喜びを話して下さった寺など、様々でした。
黙々と寺を訪ね歩く道中に、ふと約八百年の昔、真の仏法を求めて留学された、曹洞宗の宗祖、道元禅師のお姿を感じました。
中国で修行され、多くの事を学び、お釈迦さま正伝の仏法としてお伝え下さいました。その中に菩薩の行願として、「布施」「愛語」「利行」「同事」をお示しになりましたが、驚いたことに、訪ねた中国の山中の村々に、寺の建物は破壊されても、このみ佛の教えが綿々と、親から子、子から孫へと受け継がれている姿に、大きな感動を覚えました。
日中関係の悪化がニュースで報じられる中での訪中は、少し心配を致しましたが、巡拝は心に残る素晴らしいものでした。
今も心に残る出来事を少し紹介いたしますと…
・みかんの皮を砂糖で味付けし、お茶菓子がわりに、何度もお茶を勧めて下さった、信者の方々の親しみをこめた表情。
・夕暮れに近い時間に、道に迷った私達を快く目的地に案内して下さった、村の男性の親切なご行為。
・貧しい生活にもかかわらず、夕食はいかがですかと勧めて下さった、尼僧さんのお心のこもったお言葉。
・一人参加した女性に、どうぞ家の中のトイレをお使い下さいと案内された、農家のご婦人の気付きと親切。
・お別れし、暫くして振り返ると、遠い所から手を振り続けて下さる、小さな寺の尼僧さん達の姿を発見し、大きく感謝の手を振りました。
私にとって、八十歳にして学ぶ、仏縁のありがたさ、素晴らしさを実感する旅でした。
お釈迦さまのみ教えの下に、皆さまの人生に沢山の喜びの広がりをと念じ、結びと致します。