お彼岸を迎える

美濃市 安毛 永昌院 住職 高橋 定申 老師

暑かった夏もようやく峠を越えて 道端のあちらこちらに真っ赤なヒガンバナが咲き始める季節となりました。ヒガンバナは曼珠沙華とも言い法華経にも出てきますが サンスクリット語で天上に咲く赤い花、「一目見れば悪行を離れられる天の花」と言われて この花を見ると自然と悪行をしたくなくなるという教えがある、まさに仏様の花です。このような花の咲く彼岸は、泣いたり笑ったり苦しんだり愚痴ったりするこの世「此の岸」に対して  欲や妄想から離れて落ち着いた心でいつも感謝し平和な境地に至る世界「彼の岸」です。

毎月月経にお伺いする、あるお檀家の95歳のおばあ様は私がお伺いすると必ず「今日はありがとうございます。おじいさんもきっと喜んでみえます。」と手を合わせて「お嫁さんが良くしてくれて本当に幸せです。」といつも感謝の言葉でお話しされます。こんな心もちが彼岸の教えではないでしょうか。

お仏壇やお墓をきれいにし お花やお線香をたててご先祖様に感謝とお礼のお参りをすることで俗世間にいる私たちも迷いや悩みのない世界を感じることができるのです。しかし日ごろは忙しく雑事に追われ忘れがち。「今日彼岸 菩提の種を蒔く日かな」菩提とは悟りを意味します。さあ、お彼岸 今日あることを感謝してご先祖様にお参りしましょう。