お不動様

飛騨市  林昌寺 住職 中川芳秀師

 

お寺の近くにお不動様を祀ったお堂があります。毎月二十八日の縁日には、近所や信者の方が集まり、皆でお経を唱えお参りをしています。私も住職になって毎月欠かさず勤めてまいりました。

しかし今年四月の二十八日、その日私は朝から体調を崩し休んでおりました。休日で病院はやっておらず、寝ていれば良くなるだろうと安易に考えていたせいで、熱は上がるばかり。とうとうその日お参りすることが出来ませんでした。集まった方達にも申し訳ないと思いながらも数日間寝込み、その後も忙しく過ごすうちにすっかりお不動様の事も忘れておりました。

翌五月二十八日、二か月ぶりにお不動様の前へ座り、いざ法要を勤めようと太鼓を一つ打ちました。すると音がいつもと違います。ドンというお腹まで響く音ではなく、パコというなんとも情けない音がします。太鼓の裏を見ると革の一部に穴が開いていました。音を聞いたお参りの方も一様に顔を見合わせ気まずい空気が流れます。私はハッと二メートル以上もあるお不動様を見上げました。左右の目で天地をにらみ、牙をむき、両手に剣(つるぎ)と縄を持つ姿は、いつも見慣れたはずでしたが、その日はいつにもまして厳しいお顔にみえました。

「体調管理を怠るな、まさか怠け心はなかったか、仏具を丁寧に扱いしっかり管理しなさい、集まる人に迷惑をかけていけないぞ。」

全てを見透かされ、諭された気持ちでした。

全ては因縁でつながっています。体調管理を怠りお参りもせず、仏具の手入れもままならないまま、更にはお参りに来た人たちにも迷惑が掛かりました。日々の行いが色々な形でその後の自分に還ってまいります。皆さんも、一日一日を大切に、日々精一杯お過ごしください。