「良い香りのする生活」

高山市 雲龍寺 副住職 亀山 和浩

薫習という教えがあります。薫に習うと書いて薫習です。良い香りであれ嫌な香りであれ、しばらくそこに居ると香りというものは体や衣服に染み移ります。そのように香りがいろいろなものに染みて移っていくのと同じように、人の心や行いというのもまた染み移っていくものであるという教えです。確かにこの人はいつも穏やかだから近くにいると自分もなんだか穏やかな気持ちになる、この人はいつもニコニコしているから自分もなんだかニコニコしている気がするなんてことはありませんか?逆にこの人は、いつもイライラしているから自分までイライラしてしまうなんてこともあります。私は週に1.2度、先輩や同級生とチームを作ってバレーボールをしています。そのメンバーの中にとても一生懸命で、プレーも上手なコーチのような先輩がいらっしゃいます。その先輩は、練習中からとにかくよく声を出して、私が良くないプレーをすれば「もっと集中しないとダメだ」、とか「最後まで諦めるな、足を出せ」と叱咤してくれます。そうすると、そう言われないようにもっと頑張ろうと思います。また逆に良いプレーをすれば、「ナイススパイクだ」とか「失敗したけど良いプレーだったぞ」と褒めてくださいます。そうするとより一層頑張ろうという気持ちになります。私だけでなく、誰に対してもそういう風なので、自然と皆もたくさん声が出るようになり、チームの雰囲気が良くなって一体感が生まれ、足も出るようになり良いプレーも沢山出るようになります。その先輩の一生懸命な姿、香りが、チームのメンバーに染み移っていく、まさにこれが薫習なのかなと思いながらプレーをしています。皆様の周りにもそのような方はいらっしゃいませんでしょうか?そういった良い香りを感じながら、また自分自身も良い香りを周りの人たちに移してあげられる生き方、生活をしたいものです。