「火を消す」

美濃市 長徳院 住職 永田将人 師

みなさんこんにちは。長徳院住職の永田将人でございます。当院は、中濃地区では引いたら倒れるようなお寺でございまして、そんななかで、この老化が激しいこの田舎の私の頭ではとても法話は務まりませんが、すこし思い出話をさせていただきたいと思います。

昔、ある関東のお寺にお邪魔していましたときに、宗門の高校に通う学生さんが参禅に来ておりました。そのなかの一人とお話しをしておりまして、その子はお寺の息子として生まれて、将来はお寺を継ぐということでした。ただ、小さな頃から夢がありまして、消防士になりたいと。その夢はどうしても叶えたいが、なかなか現実はそうはいかないと言っておりました。消防士を何年かやってからお寺を継げばいいのではないかと言ったのですが、それもなかなか難しいと、かなわないということでした。

ただまあ、消防士というのは、火を消す、人の命を救う、そういった使命がございまして、それはもちろん大事なことですが、そこに至るまで、それを予防するのがより大事なのだと思います。だから火の用心とか、いろんな火災予防といった啓発活動をしているのが実際のところでありまして、そういったことで言いますと、たとえ消防士になれなくてお寺さんを継いだとしても、人の心に火事が起こる前に予防として仏道を伝えるという、そういった伝道の活動をするということが大事なのではないかと。人を救うという意味では、お寺も消防士も同じではないかと、私の若い頭でそんな話をした思い出がございます。