「思い通りに生きられなくて辛いと感じる人へ」

岐阜市 自福寺 住職 古川元弘 師

みなさんこんにちは 今日は「物事が思い通りにいかなくて辛い」と日々、感じてしまっている方に ちょっと考え方を変えるだけで、心が軽くなるアドバイスをしたいと思います。本当にちょっとした気づきでつらい毎日が変化するので最後まで聞いていただければ幸いです。

人は生きていくと「思い通りにならない」ことが必ずあります。学校で成績が伸びなかったり、入りたい学校や会社に入れなかったり、人付き合いでうまくいかなかったり、様々な悩みがあると思います。僕もかつて思い通りにならないことで悩んでいたことがあります。

例えば仕事の悩みで「最近 調子でないな。営業成績は伸びないし、失敗ばっかりや。」ってときがあるでしょう。僕も昔就職していた頃はそんなことばっかりで、いつも上司に怒られていました。

ですが、逆に世の中で思い通りになることってどれくらいあるでしょうか?仕事が上手くいったとき「よっしゃ!思い通りに完璧、100点や!」と感じることってどれくらいありますか? 実際にはほとんどないと思います。特に営業など相手のある仕事なら相手側にも「こうしたい!」と言った思惑もあるでしょう。お互いの思いを譲りあい、落としどころを見つけてはじめて成立するものだからです。

これは恋愛などの人間関係にも言えることだと思います。例えば気になる人がいて自分に振り向いてほしいと思ったとします。いくらこちらが情熱や愛情をもって接したとしても、相手の気持ちを自分の思い通りすることはできません。片思いというケースはいくらでもあります。それなのに思い通りにならないのは「自分に魅力がないからだ」とか「自分は相手にふさわしくない」と悩んでしまう人も多いでしょう。それで自信をなくしたり、自分を卑下してしまったりしていませんか。

なぜか人は思い通りになることを前提として「そうしなければいけない」と考えて、自分で心を窮屈にしてしまうことが多いのです。いわゆる「独り相撲」と言われる状態です。

ですが、はっきり言って世の中に「思い通りにいくこと」「思い通りになること」などは、ほとんどありません。にもかかわらず人は自分の思い通りにしようと行動するから、苦痛を伴うのです。

仏教では思い通りにならないことを「苦(く)」と言います。「思い通りにならないことを思い通りにしようとするから、悩み、苦しみが生まれる」と、お釈迦様はおっしゃられています

また「一切皆苦」という言葉があります。私たちの世界は自分の思い通りにならないことばかりであり、そのことを知ることが仏教の始まりだというお釈迦様の言葉です。

こんな話をすると、なにか悲観的になってしまうかもしれませんが、絶望することはありません。ちゃんとうまくいく方法があります。

それではここからは問題を解決する方法をお話ししたいと思います

我々は自分の思い通りにならないと、ついイライラしてしまいますが、それは問題を理解するというプロセスを飛ばしてしまっているからなのです。悩みとは自分とは無関係に単独で存在することはありません。仏教ではあらゆるものが原因と結果の法則でつながっていると考えます。まずは一歩引いて自分自身と向き合ってみましょう。問題がまったく自分とは無関係に存在しているのだとしたら、どうしようもありませんが、もし自分にも責任の一端があると考える事はできないでしょうか?ひょっとしたら悩みを解決したいと思う前に、やるべきことがたくさん見つかるかもしれません。見たくないことから目を背けないで、問題をそのまま受け入れてみましょう。それをきちんと行えばあとはおのずとやるべき道筋が見えてきます。そうしたらあとは行動するのみです!

これはテレビで観たある芸能人の方のお話です。その方は子供の頃プロ野球選手のように速い球が投げたいと思い、毎日毎日練習していたそうですが中々上達しませんでした。あるとき、お父さんがそのピッチング練習をビデオカメラで撮影していたらしく、その映像を見た本人はビックリしました。自分のピッチングフォームが目標にしていたプロ野球選手と全く違ってからです。「そりゃうまく投げられないよ」と気がついた彼はその後何度も何度もピッチングフォームのチェックを繰り返し、速い球が投げられるようになったそうです。つまり、彼は「過去の自分を見つめ直すことが大切だ」という気づきを得たわけです。

実はこの「自分を見つめ直す」といる行動がとても重要です。

僕も以前は「うまくいかないのは世の中が悪いからだ」とか「周りの人間がわかってくれないからだ」と人のせいにすることが多かったのですが、この「世の中は思い通りにならないことだらけ。自分だけではない。周りのみんなそうなんだ」と思うようになってからは、特にそのことで悩むこともなくなったように思います。もちろん時には大きな壁にぶつかることもありますが、そのときは人のせいにするのではなく、過去の自分の行動を振り返ることによって、今後自分のとる行動を客観的に見ることが出来るようになりました。

相手を思い通りにするのはほぼ不可能ですが、自分の行動を変えることなら出来るのではないでしょうか。うまくいかなかったときは相手のせいにするのではなく、自分の行動を変えてみましょう。そうしたらまた問題にぶつかるかもしれませんが、その時はまた一歩引いて自分を見る、新たな行動する、この繰り返しをすると、問題解決のための行動が忙しくなり、そのうち悩む時間が「もったいない」と感じるようになるでしょう。

今日は「思い通りにならないとき」にどうすれば気持ちが楽になるかについてお話しました。

明日からは「思い通りにならなかったら」世の中はうまくいかないことだらけだと、その事実を受けいれ、過去の自分を見つめ直し、新たな行動に移すことを心がけてみましょう。